背景
なぜ長期インターンシップが注目されているか
近年、主に中小企業の採用手法として注目を集めている「長期インターンシップ」ですが、なぜ注目をされているのでしょうか?
その背景として、中小企業の「採用難」が挙げられます。リクルートワークス研究所によると、中小企業(従業員300人以下)の2024年卒の求人倍率は6.19倍です!つまり新卒求職者1人に対して約6社競合がいる状態ということです。
このような状況で、有効な解決策として挙げられるのが「長期インターンシップ」です。
概要
インターンシップとは?
日本におけるインターンシップの定義は、「在学中・卒業直後の学生が、自分の専攻や将来のキャリアと関連した就業体験を一定期間行う事」(平成9年、文部科学省・厚生労働省・経済産業省による合意より)となっています。
その中で、短期インターンシップやアルバイトとの違いを解説します。
短期インターンシップとの違い
例外はありますが、一般的に言われている「短期インターンシップ」と「長期インターンシップ」の違いをまとめると以下のようになります。
最大の特徴は、短期インターンシップが職業体験や説明会などに留まっているのに対して、長期インターンシップは実際に働いてもらい、その分の給料を支払う、つまり会社の一員として受け入れるという点です。
アルバイトとの違い
ここでよくアルバイトと混合されることがありますが、企業と学生の『目的』という観点で区別されています。
しかし、長期インターンシップでは、企業の第一の目的は採用であったり、学生を受け入れることによって得られる発想や先入観のない柔軟な思考力です。学生側もただ給料目当てで参加する訳ではなく、そこで得られる経験や自身の成長などを第一の目的として掲げています。
ここまでで、長期インターンシップの位置付けを解説してきましたが、具体的な勤務時間や給料にも触れておきます。
勤務時間
勤務時間は後ほど解説する業種や企業によって様々です。しかし、プロジェクト運営するにあたって、週2(1日5時間以上)等の最低勤務時間を設けている企業も多いです。
任せたい業務に応じて、学生が成長できて、プロジェクト運営が可能な勤務時間にする必要があります。ただし、あくまで相手は学生なので無理のあるスケジュールを組んでしまうと、参加する学生が集まらなかったり、途中で離脱する学生が増えてしまったりします。
こういったことに注意しつつ、勤務時間を調整するといいでしょう。
給料
給料に関しても、業種や学生に任せる業務によって様々ですが、同じ業種の長期インターンシップと同水準にするのが一番無難です。長期インターンシップに参加する学生は、時間効率を意識する方も少なくないので、給料がメインの目的でないにしてもあまり低水準だと学生のモチベーションが下がる可能性があります。
といっても、最初から高い水準にする必要もありません。
営業職に多い成果によって、給料が上がるインセンティブやインターンシップ内でマネジメント職などを設け、それに応じて給料を上げるシステムは、学生のモチベーションを上げることができます。
業種によって一番学生を惹きつけられる、モチベーションを維持できる給与設定をすると良いでしょう。
ここからは「長期インターンシップ」導入のメリットについて解説していきます。
企業側のメリット
早い段階でアプローチができる
新卒採用開始で採用をスタートすると、どうしても大手の陰に隠れてしまいます。
しかし、長期インターンシップでの募集にすることで、大学一年生や二年生など、幅広い学生を対象に募集することができます。優秀な人材に早めからアプローチできることが魅力の一つです。
企業にフィットした学生を選考することができる
入社後に活躍できるか、定着するかを判断するには、より正確に適性を見極める必要があります。
しかし、書類や面接だけではその判断はなかなか難しいものです。長期インターンシップを通して、業務への適性はもちろん、社風に合うかなど企業への適性をしっかり見極めることができます。
時間をかけて魅力を伝えられる
採用活動において、企業が学生に対してアピールできる場は限られており、求人広告や説明会などではどうしても伝えきれない魅力があります。
長期インターンシップでは業務内容や福利厚生など表面的な情報はもちろん、社長の思いや社員一人一人の魅力など定性的な魅力をじっくり時間をかけて伝えることができます。
長期インターンシップで売上アップが狙える
学生を戦力化することができれば、それ自体が売上拡大につながります。そのまま採用すれば、活躍間違いなしの即戦力社員になりますし、たとえ採用につながらなくても、インターンシップ期間は優秀な学生の力を借りることができます。若くて柔軟な思考力を持つ学生は、他の社員にもいい影響を与えてくれます。
学生側のメリット
社会人としての経験ができる
長期インターンシップでは、社員と同じ業務を実際に遂行することになります。実際に働くことで、自分が社会人になった時のイメージを掴むことができ、今後のキャリアを考えるにあたって非常に効果的です。
自分に合った企業選びができる
説明会や短期間のワークでは、学生が本当に知りたい「社風」や「社員同士の関係」などが分かりづらいです。学生にとっても、時間をかけて企業を選ぶことができ、就職後のミスマッチを防ぐことができます。
自分の市場価値をあげることができる
長期インターンシップで培ったスキルやノウハウは就職活動や社会人として活躍するにあたり、非常に役に立ちます。
以上から、長期インターンシップは企業、学生双方にとって非常に有意義だということが言えます。
では実際、長期インターンシップ内ではどのような業務を学生に任せているのでしょうか。募集が多い業務内容を挙げていきます。
業務内容
営業
営業戦略の策定、営業先の選定、テレアポ、訪問販売、反響営業、既存顧客のフォローなど様々です。営業に必要な論理的思考力、社会人としてのマナー、コミュニケーション力などが身につきます。
マーケティング
マーケティングキャンペーンや広報活動の計画や実施に関わることがあります。自社商品分析、SEO対策、ソーシャルメディア管理、コンテンツ作成、イベントのサポートなど、ブランドや製品の露出を高めるための活動を担当することがあります。
ライター
企業が運営するwebメディアのコラムや企業のwebサイトの執筆・編集・校正・翻訳がメインの仕事になります。ネタをどのように選定するか、そのネタをどのように伝えるかを学ぶことが出来ます。また他業種への汎用性も高い仕事です。
企画
新規事業や既存事業の新たな戦略立案など会社の今後の方向性を計画します。学生ならではの知識や柔軟な思考力を求めている企業は多く、自分の考えを企業の売上に結びつける貴重な経験をすることができます。
エンジニア
プログラミング言語(Ruby、JavaScriptなど)を駆使して企業に欠かせないWebアプリケーション・システムを実装・運用します。エンジニアのプロとチームを組んで活動することが多く、ビジネス界で要求されるプログラミングとは何かを学べます。
デザイナー
デザインツール(Photoshop、Illustrator etc)を駆使して企業のwebサイト全般のデザインやバナー画像の作成を行ったり、HTML/CSS/JavaScriptを使ってページの構成とコーディングを行ったりします。特にオンラインにおいて企業の顔を作成するため、デザインに関するスキルを大きく成長させることができます。
以上が長期インターンシップで実施されることが多い業務内容です。他にも社長の右腕として社長のサポートをするインターンシップなどがあります。
長期インターンシップ導入における注意点
ここからは長期インターンシップを導入するにあたって注意すべき点を解説していきます。
目的を明確にする
インターンシップ実施前にプロジェクトの目的を明確にしましょう。採用が目的であれば、採用計画の策定をして採用人数、実施期間、研修内容、業務内容を決める必要があります。ここで目的を明確にしていないと、プロジェクト内容がぶれてしまって企業と学生双方にとって実りのないものとなってしまいます。
教育体制を整える
プロジェクト内で学生が成長できるよう教育体制を整える必要があります。研修内容や業務の棚卸しはもちろん、フィードバック体制や評価制度などを検討する必要があります。社長や担当員だけではなく、全社的に学生を受け入れる体制を整えることで学生が成長しやすい環境にすることができます。
コンプライアンス対策をする
就業規則や保険、マニュアル作りなど企業、学生双方を守れるようコンプライアンス対策をしましょう。事前に誓約書を用意して学生に記入してもらったり、初回研修でプロジェクトの重要性を伝えるなどはコンプライアンス対策として非常に効果的です。
学生のモチベーションを高める設計をする
インターンシップ成功の鍵は学生のモチベーションです。モチベーションを高い状態で維持できれば学生は主体的に行動し、結果的に成長していき、企業の目的も達成されます。
モチベーションを維持するポイントは、チャレンジングな課題を与えつつ、しっかりサポートをすることです。単純作業では学生は飽きてしまいますし、逆に丸投げでも学生はインターンシップ参加への意義を感じません。
まとめ
今回は長期インターンシップの概要とそのメリット、注意点に関して解説しました。
長期インターンシップが企業にとって非常に効果的だということがおわかりいただけたのではないでしょうか。
有意義なインターンシップは優秀な学生を惹きつけ、そして人が人を呼びさらに有意義なインターンシップへという好循環が生まれます。この好循環が、中小企業の武器になることは間違いないでしょう。